
モニタースピーカーをNeumann KH120 IIに買い替えてから、約8か月が経ちました。
それまで10年以上にわたって愛用していたのは、YAMAHAのHSシリーズ。途中からはARC Studioという音響補正装置を組み合わせて、環境なりにベストな状態で使ってきたつもりです。
そんな自分がKH120 IIに乗り換えてみてどうだったのか、実際に使い込んで感じたリアルな変化や気づきをまとめてみたいと思います。
YAMAHA × ARCstudio と Neumann × MA1──どちらも同じ「正しさ」を目指している
まず最初に感じたのは、「音の補正の方向性は似ている」ということ。
YAMAHA HSシリーズにARCstudioを組み合わせた音と、Neumann KH120 IIにMA1で音響補正をかけた音ーーどちらも、目指しているものはかなり近いと感じました。
もちろん細かい音の質感は違うんですが、「整えていくことでたどり着く先は同じなんだろうな」と感じました。
ちなみにMA1の使用感については、すでに多くの人がレビューしている通り。とてもシンプルで、手間も少なく、すぐに使えました。
サウンドキャラクターの違い──戸惑いから始まったNeumannとの日々
ただし、音のキャラクターにはかなり違いがあります。
- YAMAHA HSシリーズ:クリアでタイト。素朴なサウンド。
- Neumann KH120 II:奥行きがあり、深みのある鳴り。低音に芯があって、とても把握しやすい。
特に驚いたのは、KH120 IIの低音の見え方。YAMAHAの中でも最大サイズのHS8と比べてもまったく引けを取らず、むしろ芯があるぶん、聴きやすさはこちらが上。
スペック上はHS8が38Hzから、KH120 IIが44Hzからとされていますが、実際には体感的にKHの方が「出てる感じ」がします。
情報量が多いってこういうことか、と感じました。
音量をある程度出せる環境なら、問題になることはまずないと思います。
ただ、正直に言うと最初はかなり戸惑いました。
というのも、YAMAHAの音に慣れすぎていたせいで、KH120 IIの情報量の多さが逆にもわもわと霧がかかったように感じてしまいました。
「前の感覚でミックスしたのに、全然思った通りにならない」──そんな日々が続きました。何度もリファレンスを聴き直しながら、頭では分かっていても感覚が追いつかない。作業中に何度も混乱しました。
これは純粋に僕の実力不足なので、まったく気にしなくていい方もいます。
スピーカーが変われば「鳴り方」も変わる。その鳴り方を知らずに、以前と同じように音を作ろうとしても、うまくいかないのは当然でした。
鳴り方を「理解する」ということ──
今では少しずつ、Neumann KH120 IIの鳴り方がわかってきました。
たとえば「この感じで気持ちよく鳴ってたらうまくまとまってるな」とか、「このカチッとした鳴り方はEQしすぎかもな」とか。スピーカーから返ってくる情報が、自分の作業の指針になってきたんです。
おかげで、HSシリーズを使っていたころよりも良いミックスができるようになったと感じています。
それは単に「いいスピーカーを買ったから」ではなく、スピーカーの鳴り方から「おいしい部分」を導き出すという考え方に気づけたからだと思います。
Neumann KH120 IIは、そんな気づきをくれたスピーカーでした。
今では最初はもわもわに感じてた情報量の多さが少し味方になってくれた気分で作業しています。
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