たくさんのマルチエフェクターが発表されている昨今、どうしてもこれを語らずにはいられないものがあります。

AVID / Eleven Rackです!!!!
このマルチエフェクター/アンプシミュレーターは現在(2021年)は中古でなんと
2万円~3万円で取引されています!
本来、このサウンドの価値は10万円近いものです。
それが2万円~3万円。なんとコンパクトエフェクター1個か2個分で買えてしまうのです。
1年前からするとどんどん数が減っていて、買える場所も少なくなってきました。
これを買っておいたほうがいい理由はなぜなのか、コスパ最強な理由は何なのかお話しします!
現代でも通用するサウンドクオリティ
このエフェクターはProtoolsで有名な AVID が作った2009年発売のオーディオIF兼マルチエフェクター(アンプシミュレーター)です。
『2009年って・・・本気?』
って思う方、気持ちはわかります!!!!
が!
僕は普通にElevenRackで仕事をこなしてますし、これでレコーディングした曲で毎月しっかり生活費を稼いでいます。
これが何よりの根拠ですが、さらにダメ押しするなら後継機種であるHEADRUSHのエフェクターの説明文です。
伝説のラックシステムEleven Rack有りのままのリアルな応答性の高いギターアンプシミュレーター&FXプロセッサーは、スマートフォンやタブレット並みに快速に応答する7インチ高解像度タッチディスプレイで、タッチ、スワイプ、ドラッグ&ドロップによる各種設定が可能で、まるでアプリを操作するようにエフェクトシーケンスやアンプサウンドを即座に作成、高度な編集が行えます。
headrush 公式 https://www.headrushfx.com/jp/pedalboard-pedalboardxjp
プロセッサーはそのまんまってこと?
操作性が格段に上がったけど、音の本質はおんなじです。って書いているようにしか見えません。
実際本体にもElevenRackの文字が。

その真偽は定かではありませんが、公式の動画を見る限り、ElevenRackの音とほぼ同じです。
そのほかの動画もいくつか見てみましたが、HEADRUSH≒ElevenRackでほぼ間違いないですね。
この動画の上段の黄色いボタン(ソロボタン)が押されているときは HeadRush 、押されていない時(下段が再生されているとき)はElevenRackです。
DAWでいくつかの処理はされているようですが、うーんそっくり。
厳選されたアンプモデルと確かなサウンド
アンプはフェンダーやマーシャル、VOXといった定番系に加えてソルダーノやマッチレス、メサブギーにボグナー、そしてAVIDのオリジナルアンプ数種類、さらにはアンペグのベースアンプまで。
(※Eleven Rack Expansion Packという拡張パックがインストールされているものの場合)
普通に使っていくには困らないだけのアンプモデルが入っています。
もちろん、キャビもマイクも定番をしっかり押さえられています。
本当にもう無駄がない!!!!
しかし、エフェクトペダルのシミュレートは少ない印象。
例えば歪系は
- Ibanez TS-808
- Xotic RC Booster
- Rat
- Big Muff
と、あとオリジナルのもの。
その他のモジュレーションやディレイなども含めいたってシンプル。
この辺はそれぞれのペダルやラックタイプのエフェクトをセンドリターンで使ってね、ってことでしょうか。
実際ぼくはZenDriveが大好きなのでそれをよくセンドリターンでコンプの後、アンプモデルの前段に突っ込んで使っています。
コンパクトについてはそれぞれこだわりがあるだろうから任せるよって言ってくれているのでしょう。
そしてそれらのサウンドは言わずもがな素晴らしいものです。
さすがは Protoolsで有名な AVID が作っただけある。といったところでしょうか。
アンサンブルに混ぜたときにしっかりした「ハリ」があるのを感じます。
密度とコンプ感のあるMIDはレコーディング現場を知り尽くしているからこそ生まれるサウンドでしょう。
どのアンプのモデリングもそれぞれの特徴をしっかり捉えシミュレーションしつつ、扱いやすいサウンドにしっかり仕上げられているのです。
これは HEADRUSH にほぼそのまま乗っかっていても当然のハイクオリティなサウンドです。
安さの裏にある理由
最初に言っておくとこれはぼくの予測でしかなく、真実ではない可能性があります!
参考程度にしてもらえたらいいです。
なぜ驚異的なコスパといえるかというと、「質はいいのに売り方を失敗したがために値下がりしたアンプシミュレーター」だからです。
ElevenRackは発売当初は10万円前後で取引されていました。
FRACTAL AUDIO SYSTEMSのAxe-Fx Ⅱや、Kemperとの比較対象にも引っ張り出されていたクオリティをもつ本機ですが、ぶっちゃけAxeやKemperよりは明らかにマイナーで、売れていたかといわれると、さすがにその2機種には売り上げではかなわなかったんじゃないかと思います。
ぼくが推測する理由なのですが、
- 「AVIDだしProtoolsありきの商品だ」と認知されていた。
- 「オーディオIFなのか、アンプシミュレーターなのか、立ち位置が微妙だった」
といった理由であまり売れなかったんじゃないかなあと思います。
当時はLine6のPODの名が恐ろしく知れわたっていたし、Axeはハイエンド機材として確かな地位を確保していました。
そんな時期にLine6のPODよりほんの少し高いくらいの価格設定だったElevenRackは
「アンプシミュレーターの性能はもちろん。オーディオインターフェイスとしても高性能で、 Protoolsとの親和性が高くリアンプ機能が便利です!」
みたいな売られ方でした。
もしかしたらアンプシミュレーターの性能を前面にプッシュすればもう少し売れたかもしれませんが、後半部分の売り文句が微妙でした。
だって Protoolsのシェアってガッチガチのプロがほとんどで、宅録してるような人にはあまりなじんでないんです。
でも、Protoolsを使うガッチガチのプロのほとんどはアンプでマイク録りしますよね。
宅録中心のプロだってオーディオIFだけで10万円を超える高性能なものを使っています。
それをわざわざアンプシミュレーターがついたけどチャンネル数がめちゃくちゃ少なくなるIFに変えるかって言われると、そんなわけがないのです。
この時点でElevenRackを買いたがるプロはかなり絞られます。
そして趣味やセミプロ、バンド活動等でギターを弾く層についてですが、まずElevenRackには専用のフットコントローラーというものはなく、足でコントロールするには自分でMIDIを設定する必要がありました。
この時点で多くの趣味層やバンドマンたちの候補から脱落します(笑)
そしていくら質が良いとはいえ、当時はアンプの数が少ない (※Eleven Rack Expansion Packという拡張パックがなかった)ことも不人気の理由でしょう。
同じくらいの値段で、アンプやエフェクトの種類も多く、足でもコントロール出来て、YouTubeやニコニコ動画で演奏してるうまい人が使いまくってるPOD。
ハイクオリティなサウンドで、プロもレコーディングに使えるほど高性能かつ高耐久だが、アンプやエフェクトは少なく、足でコントロールできない、新しく作られた使用者の少ないアンプシミュレーターElevenRack。
勝敗は明らかでした。
すごくいい商品なのに売れにくいなあとくすぶっているうちにLine6はPOD HDを、さらにはKemperまで登場してしまいました。
その後Eleven Rack Expansion Packで機能を拡張しますが、Line6がHelixを発表。
そのまま一気に値崩れしていきました。
なんと悲しい歴史でしょう。。いや、ぼくの想像なんですけどね。
とはいえ、あながち間違いではないんじゃないかとは思います。
実際に後継機種にあたる HEADRUSH は違うブランドから発表されました。
さらにマイクのインプットが消えて、しっかりマルチエフェクターとして売り出されています。
ElevenRackはめちゃくちゃクオリティは高かった。
しかし時代と売り方と、何もかもがうまくはまらなかった。
そのせいで新品ですら3万円ほどで売られるほど値崩れをおこし、今に至ったのです。
事実、いまだ使用し続けるファンも多く、現役で戦える機材なのに!
ぼくはWindowsユーザーで、しかもCubaseを使ってるんでリアンプとかの恩恵はほぼゼロですが普通にレコーディング用アンプとして使っています。
間違いなく買い時!
そんなこんなで、知ってる人は知っている隠れた名機となった(隠れたというほどは隠れてないかも)ElevenRack。
ライブユースにはフットコントローラーの兼ね合いもあり、いまだ高めの敷居が存在しますが、宅録ユーザーやそれほどパッチを切り替えないギタリストには最高のコスパを誇るイチオシのアイテムです。
ぼくはElevenRackを8年くらい前から使っていたのですが、実は2回買いなおしています(笑)
一度はKemperを買う資金に、一度は全部ソフトで済まそうとBIASに乗り換えようとしたときです。
1回買いなおした時点で学べよって感じですが、そのくらい手放せないアイテムになっています。
1回目は中古を5万くらいで、最後の3回目は新品を3万で買ったので変な感覚です。
そんなElevenRackなので、定期的に販売価格などをチェックしてしまうのですが、
最近はかなり数が減ったように感じます!!!!
2年前(2019年)に買いなおしたころには新品で3万円前後のものも多少あったのですが、今は全く見当たりません。
中古の数もかなり減少しているように見えます。
新品が値崩れした商品なので高騰することはなかなか考えにくいですが、時々4万円以上の強気な出品もありますので何とも。
とにかく、今後購入が難しくなっていくことと思います。
買っておくなら早めがおすすめです。
そして購入時には 【Eleven Rack Expansion Pack】がインストールされているものにしましょう!
じゃないとアンプモデルも少ないし、ベースアンプ入ってないし、もし気に入らなかったときにめっちゃ売りにくいです!
(実際、1回目に売ろうとしたときなかなか売れなかった)
HeadRushとElevenRackの違い
そっくりと言った HeadRushとElevenRackですが、もちろんまったく同じではないです。
ElevenRackは1つのアンプモデルしか扱えないのに対し、HeadRushは複数のアンプモデルやスピーカーを使ってパラレル接続での音作りなどが行えます。
ほかにもElevenRackにはないアンプモデルやエフェクトの追加。
特にエフェクトの量はかなり増えているようです!
んー、気になる。
そしてDSPの向上、7インチと大きめのタッチディスプレイによる操作性や音作りのしやすさ。
実際、他社のマルチよりも明らかにつまみが少ないので、タッチパネルを使用した直感的でシンプルな操作で扱うことができます。
ElevenRackは操作に慣れるまで少し時間が必要でしたが、その辺もばっちり改善されているようです。
そしてフットスイッチ、EXPペダル完備!!
ライブで使いたい人にとってここはでかいですね。
イメージとしては「サウンドの基本はほぼそのまま、ハード面も込みで大幅にアップデートされた」という印象です。
中古でElevenRackを2万で買い、せっせこMIDIを設定して使えるようにしないといけない(経験のない方がやろうとすると調べたりするのにそこそこ時間かかると思います)のに対し、HeadRushなら数万~10万くらい足せば新しいエフェクトやアンプモデルもついてきてコントロールの設定も不要、操作しやすいタッチディスプレイもついてくるよ!という違いですね。
利便性と追加されたアンプやエフェクトに数万~10万の価値を見出せるかどうかが分かれ目です。
実際、MX5などはElevenRackを買うことと比較するとフットスイッチ代や手間を考えるなら買いかなと思います。
差額は2万ちょっとです。
ライブで使うとなるとGigboard以上が欲しくなりますね。
宅録でしか使わないよって方はElevenRackがコスパ最強なのでそっちをおすすめします。
ElevenRackの音作りのポイント
詳しい内容はまとめ始めると情報量が多すぎて大変な感じになるのでそこについては機会を改めて。
しかし最後に、この記事を読んでElevenRackを試したくなった方に、先に伝えておきたいほど大事なポイントがあります。
ElevenRackで音作りをするときはキャビ選びとEQがめちゃくちゃ重要です。
キャビネットを変えると大げさなくらいにサウンドの傾向が変わります。
実際、本物のアンプもそうなので本当にしっかりできているなあと感じますね!
まずは好きなキャビを見つけるのがいいです。もちろんジャンルごとに使い分ける感じでいいと思います。
こういう系統の音はこのキャビで・・・みたいに。
そしてアンプモデルのEQも大事ですがそれ以上にキャビネットの後に置くEQが大事です。
めちゃめちゃよく効くEQなので音作りの幅はかなり広いですね。
個人的に1KHzあたりを少しブーストした音が好きです。
生々しさが増します!
今ならコンパクトエフェクター1個か2個くらいの値段で買えてしまう最高の名機ElevenRack。
買っておくのがおすすめです!
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